松本さんが空き家再生のプロフェッショナルになるまで
エンジョイワークス オオサカの萩原です。
京都府京田辺市を拠点に「空き家問題と生活困窮者の居住問題の解決」に取り組む、松本 知之さん。
前編ではサラリーマン時代の「投資用ワンルームマンション購入」から、「会社設立」までの経緯・体験談を聞かせていただきました。
今回は会社設立当時の苦労話や、事業内容の詳細、そして今後の目標について熱く語ってもらいました。
後編スタートです。
順風満帆に思えた会社設立に落とし穴 「物件が買えない」
2018年にRennovater株式会社を設立し、2019年にサラリーマン(日本生命)を辞めました。これ一本で食べていこうと思いまして。
ところがサラリーマンを辞めた途端、物件購入に必要な融資を受けることができなくなりました。
金融機関も商売ですからね。起業したての自分には当時信用がなかったのでしょう。
「3期分の決算書を用意してきてください。」と言われるだけで、窓口で門前払いでした。
私が所有する物件は「資産価値が低く、担保にならないモノ」が多いですから、融資を受けるのも簡単ではなかったですね。
なので、2年ぐらいは役員報酬もゼロ、貯金で食いつないでいました(笑)
融資から出資へ 辛かった資金調達とその経験で得たモノ
それからは銀行融資ではなく、ベンチャーキャピタルからの出資や助成金の獲得による資金調達に切り替えました。
資金が底をつきそうな中でプレゼン。会社設立当時はずっとそれの繰り返しでしたね。
正直あまりいい思い出ではないですけど、この経験が私を強くしたのは間違いないですね。
資金繰りがマシになったのはここ最近ですよ。
事業も軌道に乗り、仲間も入社してくれ、メディアにも少しずつ取り上げてもらえるようになりました。
そのおかげもあってか、空き家の処理に困っている所有者さんから「空き家再生の相談依頼」の問い合わせもいただくようになりましたね。
相続された空き家の処理、リフォーム、再生に関するコンサルティングなど。
上場ですか?出資者はそれを期待しているので、当然目指します。
仮に上場できなかったとしても「非上場だけど上場企業並みの信用と資金がある会社」を目指します。
東京じゃなくて地方の京田辺市でそれが実現できたらカッコよくないですか?
「私がRennovaterに入社した理由」 取締役 中田 喬子さん
この会社には私が勤めていた日本生命のような大手企業出身者は、なかなか入社しないですね。
中田は私の後輩(部下)だったのですが、昨年の12月くらいのタイミングで、「うちに入りたい」と言ってくれたので。こんなことは滅多にないでしょうね(笑)
僕のキャリアが不動産屋さんからの起業であればもう少し採用はしやすかったかもしれませんけど。。。
不動産業界の人って独立心が強い人が多いので。
以下、中田さんコメント
「私がRennovaterに入社した理由は、゛社会的な事業に共感したこと"、ソーシャルビジネスがスケールすることはあまり多くないので、この会社を大きくすることにチャレンジ
することは、非常に面白そうだなと思って入社しました」
近い目標は管理室数を増やすこと、あとインターン生と一緒に新規プロジェクトも成功させたい
現在提供している室数は約200室ぐらいでしょうか。まだまだ増やしたいですね。5年後に1000室、10年後に10000室ぐらいは。
あと先程お話した、「空き家再生をキーワードとした新規事業」も展開したいです。これは今インターンで当社にお手伝いに来てくれている学生さん達とゼロから作っていく予定です。
Rennovaterが目指す将来 公営住宅と並ぶサービスをつくる
実は、公営住宅を追い出された人からの問い合わせが結構ありまして、家賃滞納で強制執行された人などです。セーフティーネット住宅的な公営住宅を追い出されるような人でも、私は拒否せず賃貸契約しています。将来は公営住宅と天秤にかけてもらえるような、住サービスを作りたいです。
家賃は公営住宅より少し高いけど、抽選なし・入居審査・初期費用なし、即日入居できる賃貸住宅の仕組みを日本中に展開したいですね。
【感想】
前編同様、後編でも刺激的なお話をたくさん聞くことができました。
松本さんは、「スゴイ」・「オモロイ」・「優しい」の3拍子を兼ね備えた社会起業家だと感心させられっぱなしでした。
エンジョイワークス オオサカはこれからもRennovaterの成長と松本さんの目標・夢の実現を応援します。
そして近い将来、「空き家活用」・「空き家再生」に関連した事業でコラボレーションできれば幸いです。
本記事に記載できなかった、「松本さん一問一答」を以下に記します。
Q:借主さんの属性は?
A:最も多いのは、「単身高齢者の方」、その次は強制執行に遭った人やネカフェ難民などの生活困窮世帯で、生活保護受給世帯者の方は2割もいない。
Q:契約を断ったことはあるのか?
A:基本断ることはないが、信頼関係を構築することが難しい方は積極的に支援を行わないことがある。
Q:利回りはどの程度気にしているのか?
A:一般の投資家さんほどは気にしていない。
Q:入居者とのトラブルはあるのか?また、これまであったトラブルで一番きつかった内容は?
A:意外に少ないが、「家が汚い」というクレームで、当社の取引先等に当社を非難する内容の文章を送られたこと。
【まとめ】
松本さんの会社に来ているインターン生は、先見の明があると思う。
学生時代、適当に就職活動していた自分を叱りたい。
松本 知之(まつもと ともゆき)
同志社大学工学部卒、京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。
国際学会(Bioceramics16)にて、最優秀賞を受賞。2004年から2019年まで日本生命保険相互会社にて、主に投資部門、企画部門に従事。個人事業として8年間の経験を経て、2018年5月にRennovater株式会社を設立。「かわさき起業家賞」受賞、第3回「日経ソーシャルビジネスコンテスト」ファイナリスト。中小企業診断士。座右の銘は、「積小為大」「努力は運を支配する」。
https://rennovater.co.jp/
中田 喬子(なかた たかこ)
東京大学文学部卒業、一橋大学大学院経営学修士(MBA)。日本生命保険相互会社にて、主に投資部門、企画部門、システム開発部門に従事した後、Rennovaterに参画。中小企業診断士。
日本証券アナリスト協会認定アナリスト。応用情報処理技術者、データベーススペシャリスト。