豊臣秀吉の弟・豊臣秀長が築城し、紀州徳川家の居城でもあった和歌山城のほど近く。江戸時代には商家が立ち並び川岸は荷揚げ場だったという「市堀川」沿いに、元うなぎ屋「いづもや」があります。この建物を、飲食、宿泊事業を軸に、地元食材など和歌山県の魅力を体験できる施設としてリノベーションするプロジェクトがはじまります。7月2日に開催されたキックオフイベントレポートをお届けします。(株式会社和み 神田和輝)

今回のプロジェクトは、和歌山県印南町で観光拠点施設 「かえるの港」を運営している株式会社和みが中心となり、事業計画から運営までを手掛ける予定です。キックオフイベントでは、プロジェクト概要や和歌山市のまちづくりについての方向性をシェア。リノベーションする物件の見学会とアイデアワークショップ、美味しいBBQを囲む懇親会まで、にぎやかに開催されました。

イベント会場は和歌山市の中心市街地、本町公園の本町プランテ2階にあるコワーキングスペース「cotowa」。まちづくりに関心のある方々から、行政、金融機関の方まで幅広い参加者となりました。

空き家や空き店舗の増加という地域課題から、まちづくり共感投資ファンドへの挑戦へ

プロジェクトの運営会社、株式会社和みの古田高士代表から、当社の取り組みや本プロジェクトへの意気込み、和歌山県内で初めての試みとなる「まちづくり共感投資ファンド」(不動産特定共同事業を活用した資金調達)への挑戦が語られました。

和歌山市を含む和歌山県全域では、空き家や商店街の空き店舗の増加と衰退が大きな地域課題です。例えば、ひとりで空き店舗を買い取り、あるいは賃借して、改装を行い、そこで事業をする―となると、大きな自己資金が必要になります。地方では、その自己資金の出し手が多くないため、結局まちに対する新しい投資がなされず、地域全体の新陳代謝が進まないため、空き家や空き店舗の増加が加速。不動産価格も下落するという悪循環になっています。

今回のプロジェクトでは、誰かひとりの力ではなく、複数人で出資し合うことができる「まちづくり共感投資ファンド」を活用します。自分たちのまちをより良くしたいという思いを持っている関係者(地元住民や地元事業者、行政や地域の金融機関等)が協力し合うことにより、空き家・空き店舗の再生を進める仕組みを構築し、本プロジェクトを機に和歌山県内でこの考え方を県内に広げていきたい。まちづくり共感投資ファンドへの意気込みは確固たるものです。

株式会社和みの古田氏 (写真/中央右)によるプロジェクト紹介

株式会社紀州まちづくり舎代表取締役で株式会社和みの取締役でもある吉川誠人さんは、和歌山市のまちづくりの取り組みを紹介。市が展開するまちの「リノベーション」の動きや事例、その中でも、市内の中心部を流れる「市堀川」を使った水辺事業や過去に実施した社会実験について説明いただきました。水辺空間に新たな拠点を創出し、まちの回遊性を向上させるもので、歴史的な地域資源である市堀川周辺に賑わいを取り戻す動きです。今回のプロジェクトも「水辺のまちづくりの動きと連動できれば相乗効果になる」と期待がさらに膨らんでいきます。

吉川氏(写真右)による和歌山市のまちづくりの取り組み紹介

懐かしく風情のある和と、水辺の相性は最高だ

プロジェクト対象物件の元うなぎ屋「いづもや」までは、本町公園から徒歩5分。今回のリノベーションの設計を担当する建築設計事務所LOCAL STUDIOの田中隆介氏(株式会社和み取締役)が、建物の状況や改築の計画案を説明。「いづもや」 という屋号の通り、かつてはうなぎ屋として使われてきた建物。昭和50年代に建てられた築約40年の、地下コンクリート造+地上2階建の木造で、店舗としては約10年前に閉業。その後は、住居として2年ほど前まで使用されていたそうです。建物の「和」のデザインは、どこか懐かしく風情のある雰囲気が感じられる佇まい。「これをうまく活用すれば新たな場所として生まれ変わる高いポテンシャルを秘めている」との説明がありました。

田中隆介さん(写真中央/ピンクファイルの方)による建物の説明

建物の裏にある「市堀川」には地下1階から川沿いの遊歩道にアクセス可能で、水辺付近の好立地。川向かいに「かに道楽」があり、ここは和歌山なのにどこか道頓堀川のような風景。 周辺を見まわしながら「市堀川」の水辺をどう活かせるか、参加者はみな、妄想を楽しんでいます。「水辺テラスや水辺アクティビティーを使った飲食も面白いのでは?」など、たくさんの意見があがりました。

元うなぎ屋「いづもや」の店舗裏、水辺側(写真右/白の建物)

田中さんに伺いました。「市堀川沿いの民間事業者による河川区域(遊歩道)の利活用に対する意欲は以前から高く、テラス席や川側への出入口の新設、簡易なテーブルやイスの設置のほか、飲食物の販売等を希望する事業者が複数あり、これまで社会実験も実施されてきた。イベント時のみの仮設でなく、常設したいという希望もあがっている。水辺空間の利用を容易にすることで、市堀川全体の利用促進を図ることができる。都市・地域再生等利用区域指定によって周辺の飲食店等を訪れる方々の増加も期待されており、これらの相乗効果により、水辺の更なる賑わいを創出できることだろう。」

参加者のみなさんからも、参考になりそうなヒントや建物、水辺空間のポテンシャルについてたくさんのアイデアをいただきました。みなさんの声をプロジェクトに反映していきます!

  • 和風な佇まいがどこか懐かしい
  • 川を見ながらお酒や食事を楽しみたい
  • 建物からの「リバービュー」がよい
  • タイルや玄関の鰻マークがカワイイ、活かしたい
     

和めるBBQ!開催。腹が減ってはプロジェクトはできぬ。腹ごしらえができたら、抱負を語らおう

午後からは美味しいBBQを囲む懇親会を、参加者のみなさんと本町公園の「the public」にて開催。美味しいお肉や野菜・お酒等を堪能していただき、私たち株式会社和みのスタッフも、みなさんに英気を養ってもらいました。終始、和やかな雰囲気となり、楽しいBBQ懇親会となりました。

和歌山の文化を発信し、観光・地域産業に貢献することを目的に、空き店舗となっている元うなぎ屋「いづもや」を活用して、地元の食文化を楽しめる飲食店と宿泊施設を計画しています。飲食店としては、健康や環境に対する意識の高まりから注目されているオーガニック食品や地元産食材を使用し、持続可能な食品の生産や地域経済の支援を目指します。印南町に本拠地を置く私たち「和み」 が手掛ける3店舗めの飲食店として、和歌山県にルーツがあると言われている発酵食品(味噌・醤油・鰹節等) にこだわり、地元食材を中心とした店舗運営を計画しています。また、宿泊施設としては小規模なゲストハウスで、アットホームな雰囲気と地域の暮らし体験の提供を目指していきます。

いづもやプロジェクトには、株式会社和みの社名にもある「和」の存在が必要不可欠です。その和とは、人と人の繋がりの「人の和」「地域との和」、加えて「”和”歌山の活性化」「和の食文化」「和みの挑戦」でもあります。いづもやプロジェクトは事業者を募るだけでなく、この場所を応援したい、関わりたいという人たちとの「和」のつながりをつくることも狙いの一つです。エリアの価値向上を目指す活動には「和」の存在が何よりも大切だと考えます。引き続きイベントを通じて和歌山の活性化に取り組んでいきます。皆さん、いづもやプロジェクトへの参加をよろしくお願いします!

次回は8月26日、「和」の食文化を嗜む会!(仮称)
「和」の食文化を学び&嗜んでいづもやでこのプロジェクトの飲食事業アイデアを語り合いましょう。8月26日(土)、株式会社和みが運営する紀伊田辺駅前の発酵カフェ「neighborhood」で、和の食文化を嗜む会!を開催予定です(内容は予告なく変更になることがあります )。

日時:2023年8月26日(土)15:00〜18:00 *予定
会場:JR紀勢本線 紀伊田辺駅前 neighborhood & tanabe en+(和歌山県田辺市湊41-1)

主催:
株式会社和み:https://www.nagomi-rea.co.jp/
株式会社エンジョイワークス